本を読み終え、つんく♂という偉大なミュージシャンの力強さに改めて深い敬意を覚えた。多忙を極めたハロプロ総合プロデューサーとしての日々は、文字通り命を削るような過酷な生活であった。彼の体は悲鳴をあげ、様々な不調に見舞われるが良い作品を造り良いライブを見せる、そのために一切妥協せずに走り続けた結果、彼は喉頭癌に侵され一番大事な声を失った。だがつんく♂氏は声を失ってでも生きる道を選んだ。家族のため、ハロプロのため、音楽を造り続けるために。非常に重く辛く、しかし勇気ある決断であった。ハロプロのプロデュースの知られざる舞台裏なども明かされていて興味深い。例えばモーニング娘。のメンバー選出は4期・5期くらいまではつんく♂氏がほぼ1人で決めていたが6期くらいからオーディション委員会ができてその意見に基づいて選考されていたという(105p)。歌唱指導のための仮唄を年70曲レコーディングしていたとか(108p)、超人的とも言えるほどの活動を続けていた。体、特に喉への負担は大きかったろうな、と感じられた。体調を崩す中で彼の心の支えとなったのが奥さんと3人のわが子たちであった。この本の随所に奥さんや子供たちへの感謝の言葉がつづられており、感動的である。2013年秋、つんく♂氏はアップフロントの山崎会長からハロプロ総合プロデューサーからの退任を勧められる(211p)。つんく♂氏はプロデューサーを続ける意欲を失っていなかったが喉頭癌であることが発覚、2014年10月5日のモーニング娘。'14のニューヨーク公演を持ってプロデューサー退任を決意する。愛弟子たちの晴れ姿を見届け、声帯摘出手術を受けたつんく♂氏は声を失い、プロデューサーを退任した。しかしその後のつんく♂氏は意欲的な創作活動を再開しており、ハロプロとも一人の作家として係わり続けるという。生きていればこそ踏み出せる一歩があるということを、つんく♂氏は身をもって証明してみせた。これからも良い作品を造り続けていただきたい、と切に願ってやまない。 「だから、生きる。」 関連情報
つんくが喉頭がん摘出手術で声帯をとっても大丈夫なわけ。
つんくが喉頭がんのために、声帯を摘出しました。つまり声をダウことができなくなってしまいました。歌手が声を捨てると言うのは
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