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木村彰吾 トヨタ 原点回帰の管理会計

本書では、全部原価計算の管理会計利用上の問題点が丁寧に記載されており、非常にためになった。学術書寄りではあるが、原価計算・原価管理業務に従事し、よりよい方法を検討されている実務担当者方であれば、トヨタ式生産管理を前提にしない会社の方も含め、大変参考になると思われる。【内容の概要】書名からは分かりにくいが、本書では、まず、原価計算基準に基づく全部原価計算が、トヨタ生産方式(Toyota Production System:TPS)との間に起こすコンフリクトを明らかにしている。次に、トヨタ生産方式の指向性(JIT等)と適合する管理会計指標を検討している。本書によれば、トヨタは、「会計フリーアプローチ」=”工場管理は原単位で行い、会計指標を関わらせない”であるのに対して、著者らは会計学者であるだけあり、「会計リンクアプローチ」=”トヨタ生産方式にフィットする会計指標を設定する”ことを提案している。【本書の特色と評価】本書で、全部原価計算とトヨタ生産方式との間に指摘されるコンフリクトは、従来、全部原価計算の限界として指摘されてきている内容であり、トヨタ生産方式に限らず、生産管理一般との間に生じるコンフリクトでもある。しかし、通常の管理会計書では、コンフリクトの対象は詳説されないのに対し、本書では、トヨタ生産方式の管理側面の本質を詳説した上での対置となっているため、コンフリクトがいかに本質的なところから生じているかが浮かび上がり、問題点への理解が非常に深まる。説明深度についても、理論的な説明がなされており、読んでいて、なるほどと思う点がいくつもあった。また、トヨタ生産方式をとろうとすると切替年度に発生する、会計利益の減少問題についても説明されている。著者に寄れば、この問題が、トヨタ生産方式の導入時の障害となることが多いそうであるが、なるほどと思った。後半では、著者らは、トヨタ生産方式の管理面での着目点を、タクトタイム・リードタイムとみて、トヨタ生産方式と整合する管理指標として、時間軸を取り込んだ指標を提案している。指標は、分かりやすいものでありよいものと考える。また、指標そのものはトヨタ生産方式を前提としなくとも利用できるものである。むしろ、かんばんを導入している会社で、かんばんの受け渡しだけで管理を済ませ、どの製品がどの工程にどれくらいの期間あったかの情報を収集していない場合、本書で提唱する時間軸を取り込んだ指標の適用が難しいように思われる逆説的な点が指摘される。【留意点】本書は、記述上、原価計算基準の全部原価計算を十分に理解していることを前提にし、全部原価計算との対比で説明を展開しており、レベル的には、原価計算・管理会計の応用レベルである。したがって、原価計算の前知識がなく、この本が管理会計の最初の本、ということであると、読むのには、ちょっときついような気がする。この点、本書は、出版も4月であるし、大学の教科書での利用も考えられているのかなとも思われるが(著者の中心メンバーは、トヨタも所在する愛知県にある名城大学の教授)、学部生にはきついのではないかな。 トヨタ 原点回帰の管理会計 関連情報




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