理研の笹井氏 商品

理研の笹井氏 捏造の科学者 STAP細胞事件

昨年のSTAP騒動を振り返る為に購入しました。率直に言って大きな期待はしていなかったのですが、予想外の完成度の高さに舌を巻きました。本書を読み、STAP現象への肯定・否定派を問わず著者が培ってきた研究者の方々との"つながり"が、バランスの取れた報道とスクープに結実していった事が理解できました。また研究者への期待と失望、研究の理想像、組織優先の論理と研究不正への怒り、どの考えも私には非常に共感できるものでした。笹井氏とのメール内容も含め随所でこれまで明らかにされていなかった様々な新情報を目にすることができて良かったです。今後のご活躍を期待しております。付記:胎盤分化の謎について(専門的な内容になります)私が思うところ現時点においてSTAP細胞事件の最大の謎であるところの胎盤分化について、本書を読んだ上での考察を述べさせて頂きます。笹井氏や丹羽氏がその専門家としての信用を元に取材や会見時にたび重ねて世界へ向けて保証した「STAP現象は本物であり、ES細胞の混入では起こりえない」と言う発言根拠が完全な虚構であったのか否かという問題です。まず本題に入る前に、STAP論文の構造について簡潔に触れます。この論文は時期的にも、関連人物的にも、内容的にも、論理的にも、全三層からなる多層構造になっております。第一の層は2009年にネイチャーに投稿し2010年春に却下された"STAP論文の原型"であるところのスフェア細胞論文。主体はハーバードのバカンティ研であり、内容は細管を通すという物理的ストレスによって各種の体細胞から多能性マーカーの発現能やテラトーマ形成能を保持する多能性細胞を選抜可能であるという論旨であったと思われます。O氏の博士論文とほぼ重複した内容になっており、同年末にTE誌に掲載されました。第二の層は2012年にネイチャー、セル、サイエンスに立て続けに投稿し、ES細胞の混入ではないかと疑われ却下されたアニマルカルス論文の内容です。西川先生のアイディアにより刺激によるリプログラミングの根拠としてのTCR解析データも加わりました。それに伴い幼齢マウスの脾臓から採取されたCD45陽性細胞が主な実験対象となり、さらにテラトーマに加え若山氏の助力を得てキメラマウスの実験を行い、より信頼性の高い手法で細胞の多能性を証明しました。第三の層が笹井氏や丹羽氏が加わり、2014年にネイチャーに掲載された最終バージョンに追加された内容です。著者の査読資料からのスクープで明らかになったように、STAP現象はES細胞の混入ではないかと以前からレビュアーに指摘されてきました。この最後の関門を突破できた理由は「胎盤にも分化する」というES細胞では容易に説明できない現象が持ち出された事が最大の要因であったと思われます。その結果、STAP細胞がES細胞でない事を証明した他の数多くのデータやと共にレター論文としてまとめられ、元のアーティクル論文から分離する事にもなりました。以上の見地に立ちますと「STAP細胞は若山研のES細胞の混入で全て決着した。」という昨年12月の理研調査委の最終報告は大きく欠失している部分がある事がわかります。本当の現状を科学的に正確に表現するならば「STAP細胞が多能性を示すというテラトーマ及びキメラマウス(第二層データ)は遺伝子解析結果によりES細胞の混入と断定された」「それと同時にSTAP細胞がES細胞でない事を証明した第三層データが完全な虚構である事も確定した」となります。しかし後述しますが、調査委は第三層のメインデータである胎盤分化の試料解析にはまったく手をつけていないのです。そもそも若山氏によりますと"STAP細胞とES細胞はもともと胎盤の光り方に差はなかった"という事です。氏によるとES細胞でも胎児の血流が胎盤に流れ込んでそれなりに光る事から、STAP細胞が胎盤にも分化できるという根拠は実際には光り方ではなく、胎盤切片においてSTAP細胞由来のGFPが発現していることを胎盤分化の権威である丹羽氏のところでO氏を通して確認したという説明でした(会見より)。実際に丹羽氏は著者への手紙(p120)においてSTAP細胞由来キメラマウスの胎盤切片パターンがES細胞とは絶対的に異なるという事を口にしておられます。会見(p158)においても「STAP細胞由来と思われるGFPが胎盤組織の内部にインテグレートしていることを顕微鏡で自分の目で確認している」と断言されております(youtube「STAP細胞」検証計画について3/3, 11:30〜)。最終的に、この観察結果こそが笹井氏がSTAP細胞がリアルフェノメナンであると主張した、あるいは信じた最大の科学的根拠となり(p186,p195)、その為に検証実験等が推し進められ、本事件がもつれにもつれた要因になったと感じます。しかしながらこの肝心の胎盤切片データは実際には論文中に示されておりません。そのかわり、同一試料由来のマウスと胎盤を用いES細胞よりもSTAP細胞の図の胎盤が光っているように見せかけていただけでした(P206)。(その他の根拠として示されたライブセルイメージングや電顕による細胞形状に関しては酸に浸したES細胞のデータが存在せず、議論不能なので割愛します)。現状、これらの事象を解釈するに当たって次の2つの可能性があると思われます。1つめは胎盤分化の科学的根拠が始めから存在していなかったという可能性です。つまりCDBにおいて架空の切片試料による丹羽氏の空手形の保証の元に一部上層部の号令の下でレター内容であるところの「STAP細胞(やFI幹細胞)は胎盤分化にも寄与する=ES細胞の混入ではありえない」というデータが創り上げられ、論文を押し通したと言う事になります。その場合、組織的な不正行為は明らかであるように感じます。またSTAP細胞が胎盤に分化する根拠を最終的に保証・確認した人物がO氏で無い以上、O氏はこの点について告発者の立場を取り得ることも可能であるかもしれません。一方で理研も第二層の研究不正の関し研究費や給料返還の訴訟を起こせる立場にあります。この観点に立てば両すくみであるところの理事長の新生活の門出に向けたエールなどが理解できる気がいたします。2つめの可能性は丹羽氏の報告が事実であり、STAP細胞由来(とされた)キメラマウスの胎盤切片試料において組織内GFP分布が実際にES細胞の混入では説明できるものではなかったというものです。つまり笹井氏や丹羽氏が少なくともES細胞の混入では説明のつかない、STAP細胞を信じる要因となった"ファクト"があったということです。この仮説に沿えば両氏の言葉や行動が科学者として矛盾なく説明できます。しかしこの場合、理研はこの細胞形質がどのような経緯で生み出されたのかという、未だ手つかずの難題に直面せざるを得ません。TS細胞様の形質を持つ、この未知な細胞の混入経緯や出所如何によっては若山研の試料管理問題に責任転嫁する事ができない可能性もあり、一刻も早く特定国立研究法人の指定を受けたい理研にとって避けたい状況と思われます。結局のところ理研にとってはどちらも直面しがたい現実であり、この見地に立ってみると昨年12月の理研調査委が若山研で行われたテラトーマとキメラマウスに調査を集中させ、ES細胞では説明不能なデータについて調査せず幕引きした理由が明確になります。例えばレターの補足図2の胎盤切片写真ではFI幹細胞の胎盤組織が特異的にGFPを発現しており、一方でコントロールとして示されているES細胞の胎盤組織ではほぼ見られません。保存されていたFI幹細胞は既にゲノム解析によってES細胞であることが明らかにされておりますので、TS様細胞の混入やすり替えがFI幹細胞に限ってもどこかの段階で起きていた事が示唆されます。またその他の重要な試料として、本書p175において理研はSTAP細胞由来キメラマウスの胎盤と胎児(ホルマリン漬け)を理研が保管している事が明らかになっております。この試料に関しても調査委はなぜか完全にスルーしました。このSTAP細胞由来キメラマウスの胎盤切片をGFP免疫染色する事で、丹羽氏や笹井氏の主張したES細胞の混入では起こり得ないという科学的根拠が実在していたか、わかるはずです。このように既に試料の存在が明らかになっており、単純に胎盤にGFPが発現しているかYES/NOの二者択一で答えが定まる問題を調査委が放置したのは極めて不誠実だと感じます。今後、試料提供を理研に要請し第三者の元で簡易解析を行うような動きが起こり、第三層の"核心"について決着が着くのではないかと期待します。またその結果によって事件の全貌や本書に示された笹井氏の手紙の真意が明らかになると思われます。蛇足になりますが、もしこれら試料の胎盤組織にGFPの発現が見られたならば"STAP細胞はES細胞の混入で決着した"と言う理研調査委の結論は崩壊します。単に第二層、2012年バージョンのSTAP細胞データがそう作られていただけと言う事になるからです。その場合、STAP細胞由来の胎児と胎盤を遺伝子解析することにより、まずES細胞とTS細胞の組み合わせであったのか等の検証が行えるはずです。それによっても結論がつかない場合、"GFPを発現する胎盤組織"のゲノム解析等で笹井氏や丹羽氏が主張した、または信じた「2014年バージョンSTAP細胞」の正体が何であったのか確認する必要が出てくると思われます。結局のところ理研上層部の科学に対するその場凌ぎで無責任な対応は、最後まで変わりませんでした。本事件が世界三大研究不正と呼ばれるに至り、ネイチャーに(オンライン限定を含め)十数回の記事が掲載され世界中の研究者が知る所となった現在でさえ、このように組織に刃が迫る問題はほっかむりをしているのです。ES細胞の混入に関してもシェーン事件やファン・ウソク事件とは対照的に、不可解に状況検証を放棄しているのです。私は理研の最終報告における理事の方々による言葉「(試料解析を優先しなかった事について)徹底的に間違った進め方をしたとは思っていない」「これ以上の調査をするつもりはない」を聞いて著者の最近の記事と同じく、理研の将来が見えたような気がしました。しかし本事件の核心がウヤムヤのままでは、まともな対応策も策定できず、今後も同様の悲劇が繰り返されるかもしれません。理研が今からでも胎盤分化の問題にメスを入れる事を切に希望します。それが国民から信頼を依託され多額の研究費を消費する組織として必要最低限な責務であると感じます。その他、心にひっかかった事:本書では3月9日に共著者の合意の元にNatureに送ったとされる修正版が触れられていません。この修正版は後日、理研が調査委の発表スライドを数回に及び無断訂正する原因となった"真正とされるテラトーマやin vitro分化の画像データ"が納められています。これら差し替え画像の一部にもさらに特許書類画像の流用などが指摘されていることから、疑惑に対する当初のCDBの姿勢がどのような物であったのかを確認する判断材料になると思われます。p187博士論文からの流用が認定されなかったArticle Fig2残り3枚のテラトーマの謎について。これは3月前半に小腸や膵臓の構造があまりにも分化しすぎていてテラトーマに見えないと指摘されたのが始まりだと思います。笹井氏は自らテラトーマを確認して撮りなおしたと著者への手紙で述べました(p197)が、昨年12月の理研の調査委によりGFPが発現していないことが確認され、実際にテラトーマではなくホストマウス組織であったことがわかりました(小腸上皮Article Fig.2e及び膵臓 Fig.S4c)。該当実験を記したO氏のノートにおいて小腸や膵臓部位にテラトーマはスケッチされておりませんので、ホスト組織がテラトーマにたまたま取り込まれた可能性も無いと思われます。p103, STAPの源流であるスフェア細胞論文について。これは理研や若山氏が関与する以前のバージョンでありますので若山研のES細胞が混入するはずもなく、TE誌や博士論文の中心データでもあるスフィア由来テラトーマが何を根拠に作成されていたのか興味を持ちました。また上記テラトーマ分化問題を指摘された方はTE誌Fig6や博士論文図14のスフェアテラトーマについても分化しすぎてテラトーマにとても見えないという指摘をされています。ちなみに12月の調査委報告書においてテラトーマ実験はO氏が単独で行ったと断定されておりますが、Nature Articleのcontributionsにはハーバード所属の方との共同実験によるものと明記されております。p210 テラトーマ実験を記したノートの一部が公開された理由に関し、あえて杜撰なページを選んで責任能力を回避しようとしたという引用と推測が為されております。しかしこれはテラトーマのエア実験の疑惑の高まりに対し"エア実験のように言われているのは情けない。 ちゃんとやっているんだから、ちゃんとやっている証拠を公にしたい"というO氏の代理人の説明と共に出てきましたので、その解釈は誤りであると思われます。細かい点をいくつか:p150香港大学の李教授の報告は正確には、酸のみや改良版の酸+研和(Tritulation)の作成法でもまったくダメで、コントロールの研和のみでなぜかOCt4及びNanogのmRNA発現亢進が見られたというものです。しかしそのレベルはES細胞と比べて微小であり、多能性を示すポジティブな結果とはとても言えないとのことです。p260 TruSeqとSMARTerは共にRNAを精製するキット名ですので、少し違った解析ではなく、少し違った試料の方がより正確と思われます。p300 アクロシンGFP(Acr-GFP)のアクロシンは遺伝子ではなく、そのプロモーター配列がGFPにつながれております。p301 マウスゲノムはアクロシン遺伝子を保持しています。元マウスが所持していないのはアクロシン(プロモーター)GFPですp325 STAP細胞はスフィアとは違いますが、定義上はどちらも生体内から採取した細胞ですp376 "疑惑の数が火だるま式に膨らむ"とありますが、雪だるまでは?p377 "真偽不明の虚偽の情報”という文章は少しおかしいと思われます最後に一つ苦言を呈するならば(他の方も指摘されておりますが)若山氏や笹井氏まで捏造認定されたかのようにミスリードを起こさせるカバー写真とタイトル。そして"誰が、何を、いつ、なぜ、どのように捏造したのか"という書帯。これらの装丁は志と内容にそぐわないと感じました。 捏造の科学者 STAP細胞事件 関連情報

理研の笹井氏 あなたのせいではない 笹井氏の自殺、小保方氏を巡るSTAP細胞の今

死を選ぶひとの、絶望の深さに言葉を失う。あなたが、そして私が、騒動を他人事のように眺めていた人たちが、このような事態を招いたのだと言いたいが、それでは死者への冒涜だ。やはり、「あなたのせいではない」としか言えないのだろう。どうしても気にかかる事がある。ES とかかれたラベルについて。何故、それは取り除かれず、人目に触れるように置かれていたのか?小さな事だが、何かを告げているように思えてならない。核心へ。 あなたのせいではない 笹井氏の自殺、小保方氏を巡るSTAP細胞の今 関連情報




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