ボゴレリチ。1980年ショパン国際ピアノコンクールで壮絶なデビューになったのは記憶に新しい。服装、レコーディングの場所もシックでお洒落。特に服装はボゴレリチの個性が強く輝いている。演奏は非常に堂々として、若いにもかかわらず「王者」と言う雰囲気を醸し出している。コンクールでは異端児扱いだったボゴレリチが現在、重要なポジションにいるピアニスト。なんと皮肉なものだろうか。彼は審査委員よりも、聴衆の求めているものを出してくれる。時には極度なものだが、天邪鬼的なところもあって逆に音楽そのものが新鮮に聴こえてしまう。このDVDはそんな彼の堂々とした様子が良く判る。映像も美しい。ハイドン、モーツアルトでも個性は良く発揮していると感じられる。彼の事を良く知らない人でも是非見て欲しい。完成度は非常に高い。トルコ行進曲が特に素晴らしい。テンポ、技巧、スタイル、音色、どれをとっても私の中ではナンバーワン。ただ残念だったのは、やはりコンクール時の「極度な個性」が薄まってしまった感じがする。あの時、そんな彼に興奮してしまった人には多少物足りなさを感じてしまうのではなかろうか? ポゴレリチ・ピアノ・リサイタル [DVD] 関連情報
ボゴレリチ。1980年ショパン国際ピアノコンクールで壮絶なデビューになったのは記憶に新しい。服装、レコーディングの場所もシックでお洒落。特に服装はボゴレリチの個性が強く輝いている。演奏はショパンのピアノソナタやポロネーズ5番が特に光る。有り余る技巧を押さえている演奏表現は特に注目すべきところ。過去と比べて彼のスタイルの変化が感じ取れる。直立不動的な演奏も素晴らしい。余計な動作はあまりない。けれどもその一方で、ショパンコンクールでの極度な個性がなくなってしまったかの様にも感じ取れてしまう。演奏としては現在でも一流だが、コンクール時の強烈な個性を求めている人には物足りない様に感じられる。しかし独特の表現解釈は頭一つ飛び出しており全曲通しても、お勧めの一枚と言えるだろう。 ポゴレリチ・プレイズ・ショパン&スクリャービン [DVD] 関連情報
鋭く研ぎ澄まされた感性と斬新な解釈、そして切れの良いテクニック、その上スター性を備えたルックスで皮肉にもショパン・コンクール落選後に一躍ピアノ界の寵児となったイーヴォ・ポゴレリチが、デビュー時から90年代にかけて録音したグラモフォン音源のCD14枚をまとめたもので、異色の新人として賛否両論の中でかえって話題をさらった稀有の才能は、グールド以来のピアノ界への大きな波紋とも言えるし、尽きることのないオリジナリティーに富んだ音楽的アイデアとそれを実現する強靭な意志とテクニックには実際驚かされる。このセットには彼の絶頂期の演奏のエッセンスが集約されていると言えるだろう。彼が語られる時には1980年の第10回ショパン・コンクールのエピソードが常につきまとうことになる。この時の優勝者はダン・タイソンだったが、既にテルニとモントリオールの覇者でもあり有力候補だったポゴレリチは、最終予選での演奏がショパンの様式に則っていないと判断され、本選に残ることができなかった。審査員だったアルゲリッチが「彼こそ天才」の捨て台詞を残して退席した事件は、当時の審査委員会の旧態依然とした保守的で偏狭な体質を象徴している。その頃学生だった私は、ある時偶然ラジオからピアノ界のある重鎮がポゴレリチのどこが様式から逸脱しているかを、ポーランドのショパンの権威、ヤン・エキエルなるピアニストの演奏と聴き比べてアナリーゼしている番組を聞いた。しかし引き合いに出されたエキエルのピアノは如何にも杓子定規でちっとも面白くなく、これが正しい奏法だと言われても単なる権威を笠に着た演奏としか感じられず理解に苦しんだ思い出がある。むしろコンクールでのポゴレリチの果敢な挑戦と鮮やかな敗北に快哉を叫んだものだ。彼は夫人が他界した後、演奏から遠ざかり公式な録音も中断していたが、2010年からは以前のペースを取り戻しつつある。年齢からすればまだ引退するような時期ではないので、今後の活躍に期待したい。収録曲目[CD1]ショパン:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調Op.35、前奏曲嬰ハ短調Op.45、スケルツォ第3番嬰ハ短調Op.39、ノクターン変ホ長調Op.55-2、エチュードヘ長調Op.10-8、同変イ長調Op.10-10、同嬰ト短調Op.25-6(1981年)[CD2]ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番ハ短調Op.111 シューマン:シンフォニック・エチュードOp.13、トッカータハ長調Op.7(1981)[CD3]ショパン:ピアノ協奏曲第2番へ短調Op.21、ポロネーズ第5番嬰へ短調Op.44 クラウディオ・アバド指揮、シカゴ交響楽団(1983)[CD4]ラヴェル:『夜のガスパール』 プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番Op.82(1982)[CD5]チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23 クラウディオ・アバド指揮、ロンドン交響楽団(1985)[CD6]バッハ:イギリス組曲第2番イ短調BWV807、同第3番ト短調BWV808(1985)[CD7]ショパン:『24の前奏曲集』Op.28(1989)[CD8]リスト:ピアノ・ソナタロ短調 スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番嬰ト短調Op.19(1990)[CD9]ハイドン:ピアノ・ソナタ第46番変イ長調、同第19番ニ長調(1991)[CD10]ドメニコ・スカルラッティ・ソナタ集 K.20ホ長調、K.135ホ長調、K.9ニ短調、K.119ニ長調、K.1ニ短調、K.87ロ短調、K.98ホ短調、K.13ト長調、K.8ト短調、K.11ハ短調、K.450ト短調、K.159ハ長調、K.487ハ長調、K.529変ロ長調、K.380ホ長調(1991)[CD11]ブラームス:カプリッチョ嬰へ短調Op.76-1、インテルメッツォイ長調Op.118-2、2つのラプソディーOp.79、3つのインテルメッツォOp.117(1991)[CD12]ムソルグスキー:『展覧会の絵』 ラヴェル:『優雅で感傷的なワルツ』(1995)[CD13]モーツァルト:幻想曲ニ短調K.397、ピアノ・ソナタ第5番ト長調K.283、同第11番イ長調K.331『トルコ行進曲』(1992)[CD14]ショパン:スケルツォ集 第1番ロ短調Op.20、第2番変ロ短調Op.31、第3番嬰ハ短調Op.39、第4番ホ長調Op.54(1995) Various: Complete Recordings 関連情報
今までポゴレリチの演奏をほとんど聞いたことがなかったのですが、このCDを聞いてたちまちファンになってしまいした。D.スカルラッティのソナタはピアノではホロヴィッツの演奏が一番好きでしたが、これからはポゴレリチを聴くことが増えるでしょう。特にテンポの速い曲において、実に切れのいい美しいピアノを聴くことが出来ます。K.13が一番素晴らしく、あまりの心地良さに何度も聞いてしまいました。ホロヴィッツの名演があるK.380はまるで異なった演奏で、ポゴレリチの才能の豊かさを感じます。ただし遅めの曲では、ハスキルのしっとりとした消え入るような雰囲気の方が好きです。 スカルラッティ:ソナタ集 関連情報